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2016年11月に開催された「エアコンのいらない家・千葉N邸」のオープンハウスの模様をお送りいたします。意匠設計を担当した小沢桃子が設計のねらいと、この家ならではの見所を語りました。(2016年11月27日)
構成:西田結花(ライター)
The first floor - 1
風を通すためのグローエ 篇
小沢
この家の意匠設計を担当いたしました小沢です。よろしくお願いします。
きょうはオープンハウスということですので、この家の設計についてさまざまな角度からざっくばらんにお話していきたいと思います。まずは、この家とエアコンのいらない家との関係についてお話しておきます。
そもそもこの家は、お施主さんと私が知り合いで、奥様からご自宅の設計をご依頼いただいたのがすべての始まりでした。当初は、「エアコンのいらない家」というコンセプトありきで計画が進んでいたわけではありません。
建築家に設計を依頼する気もなかったそうで、お施主さんはごくごく「普通の家」を望んでおられました。週末に住宅展示場を巡っては、ハウスメーカー、工務店各社からたくさんの提案をいただいたそうです。私はそれらの提案に、友人として突っ込みを入れるという「セカンドオピニオン」の役をしていました。
ただ、どの提案にも一長一短があったんです。
デザインはとても良いのだけれど、性能について質問すると担当者がはっきり答えてくれない、とか。エコを前面に押し出したハウスメーカーのデザインは軒並みひどかった、とか。工務店は間取りが平凡すぎてつまらない、とか。
そういうジレンマに陥るなか、もしかしたらお施主さんが本当に望まれている住まいの方向性にいちばん近いのは「エアコンのいらない家」ではないかと気づき、私から設備設計者の山田さんにご協力を呼びかけたという次第です。
エアコンのいらない家の仕組みについては、すでにいろいろなところで紹介されていますので、きょうはこの家がどういうかたちでエアコンのいらない家になっているのか、そのあたりを中心にお話していこうと思います。
土間玄関の小さな「囲まれ感」
小沢
1階の平面図はごらんのとおりです。
敷地も同じように南北に長い形状で、南側が道路に面しています。いわゆる都市部の典型的な住宅地といえるでしょう。
エアコンのいらない家のセオリーどおり、まずは冬の日差しをたくさん取り込めるように南面に大きな開口部を設けています。とはいえ目の前が道路ですので、1階の窓はある程度サイズを抑えました。
一方、2階の窓は大きく取っています。
敷地が準防火地域なので、お施主さんが要望された木製サッシでは窓のサイズに制限があるんです。その制限のなかで最大のサイズを求めるとこうなったわけです。
日差しがたくさん入りますので、ここは主に洗濯物の室内干しスペースになる予定です。
玄関は南面の真ん中に設けました。
同時に、南面全体を「縁側空間」として日差しを取り込むための場所と位置づけています。
物理的には「室内」ですが、感覚的には「半屋外」のイメージです。それを強調するために、床にはタイルを張って土間のような雰囲気にしました。いわゆる「土間玄関」ですね。
奥行きは910㎜しかありませんが、西側の壁が少し出張っているので、コーナーにちょっとした「たまり」が出来ます。狭いといえば狭いのですが、それが逆にちょっとした「囲まれ感」を演出して、なんとも言えぬ落ち着いたスペースになるのではないかと期待しています。